Insights / 論考

あなたの院は、どのタイプで失注しているか ―
4つの失注タイプ自己診断

「今日のカウンセリング、決まらなかった」——その理由を、院として言葉にできているでしょうか。失注は記録に残りにくく、原因が院内で共有されないまま繰り返されがちです。まず、自院がどのタイプで失注しているかを掴むところから始めます。

山本翔太 Vitality Design LLC 代表 生活者理解の現場〈His Recoveries〉を自ら運営 読了 約8分
結論

自由診療の失注には、価格離脱型・信頼不足型・決断先送り型・新人格差型という4つの典型があります。10問のセルフチェックで自院の傾向は掴めますが、タイプ別の打ち手は現場のフロー・スタッフ構成・価格帯を見ないと決められません。自己判定はあくまで目安であり、断定はできません。

この記事の要点
  • 失注は「なんとなく決まらなかった」で処理され、記録に残らない。そのため院として原因を掴めていない場合が多い、と私たちは見ています。
  • 失注には ①価格離脱型 ②信頼不足型 ③決断先送り型 ④新人格差型 という4つの典型があります。
  • 10問のセルフチェックで、自院がどのタイプで失注しやすいかの傾向を自己判定できます。
  • ただし、タイプが分かっても打ち手はタイプだけでは決められません。フロー・スタッフ構成・価格帯を見て初めて処方が決まります。
  • 自己判定は目安であり、断定はできません。あくまで「どこを見に行くべきか」の当たりをつけるための道具です。

成約率を上げたい、という相談はよくいただきます。ですが「なぜ決まらなかったのか」を院として言語化できているケースは、実はそう多くありません。多くの現場で、失注は「なんとなく決まらなかった」という感覚で処理され、記録にも残りません。理由が残らなければ、同じ失注が静かに繰り返されます。

この記事では、失注を4つのタイプに分け、10問のチェックで自院の傾向を掴めるようにしました。ただし先に断っておくと、この記事は「答え」を配るものではありません。タイプが分かっても、打ち手はそれだけでは決まらないからです。理由は最後に書きます。

01なぜ失注は、院内で「見えなくなる」のか

成約は記録されます。売上に直結するからです。一方で、失注はほとんど記録されません。「検討します」と帰った人がなぜ決めなかったのか、その理由がカルテにも予約システムにも残らないのが普通です。

結果として、こういう状態が生まれます。

失注が見えなくなる典型
  • 担当したスタッフの中では理由が「なんとなく」分かっているが、言葉になっていない
  • 院として集計されていないため、価格の問題なのか説明の問題なのか切り分けられない
  • 「決まる人は決まる、決まらない人は決まらない」で片付けられ、改善の対象にならない

失注を減らす第一歩は、テクニックの前に「うちはどのタイプで落としているのか」を掴むことです。落ちる場所が違えば、打ち手はまったく変わります。

024つの失注タイプ

現場でよく見られる失注は、大きく4つに整理できます。多くの院は、このうち1〜2タイプに偏っています。

① 価格離脱型

説明には納得している。ただ「金額」で止まる。予算感が事前にすり合っていない、支払い方法の選択肢が乏しい、価格に見合う理由が言語化できていない——といった要因で、費用提示の瞬間に温度が下がるタイプです。

② 信頼不足型

「この人(この院)に任せていいのか」で止まる。初対面のカウンセラーがいきなり治療と費用を提示する、医師の関与が見えない、不安への応答が薄い——など、金額以前に信頼が積み上がっていないタイプです。

③ 決断先送り型

納得も信頼もある。でも「今日でなくていい」で帰る。今日決める理由がない、次の一歩が曖昧、持ち帰ると熱が冷める——という、クロージング設計の不在で落ちるタイプです。煽って決めさせる話ではなく、意思決定を支える導線の話です。

④ 新人格差型

ベテランは決まるのに、新人だと決まらない。つまり成約が属人化していて、担当者によって失注率が大きくぶれるタイプです。院全体の平均を、一部のできる人が支えている状態です。

この4つは排他的ではありません。ただ、たいていの院には「主因」があります。次のチェックで、その当たりをつけます。

型はここまで共有できます。御院のどこで会話が止まっているかは、聞かないと分かりません。 お話を聞かせてください

0310問セルフチェック ― 自院はどのタイプか

直近3か月の「決まらなかったカウンセリング」を思い浮かべながら、当てはまるものにチェックを入れてください。各設問の末尾に対応タイプ(①〜④)を記しています。

読み取り方

①〜④のうち、最もチェックが集中したタイプが、いまの主因である可能性が高い傾向です。9問目・10問目(記録と型の不在)にチェックがついた場合、どのタイプであっても「失注が見えていない・仕組みになっていない」状態が土台にあります。

※ このセルフチェックは傾向を掴むための目安です。設問数も限られており、これ単体で自院のタイプを断定することはできません。あくまで「どこを詳しく見に行くべきか」の当たりをつけるための道具として使ってください。

04タイプが分かっても、打ち手はそれだけでは決まらない

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。タイプが分かれば方向は見えます。しかし、具体的な打ち手はタイプだけでは決められません。同じ「価格離脱型」でも、処方はまるで違うからです。

どれが効くかは、実際のカウンセリングの流れ・スタッフの構成・価格帯・来院前の導線を並べて見て初めて決まります。ここを飛ばして「価格離脱型だから割引を」と処方すると、利益を削っただけで失注は減らない、ということが普通に起きます。

だからこの記事は、あえて処方を書きません。タイプの特定は自分でできる。けれど、その先の一手は、現場を見ないと責任を持って書けない——というのが正直なところです。

まとめ

結論失注は記録に残らず院内で見えなくなる。まず4タイプのどれで落としているかを掴む。ただし打ち手はタイプだけでは決まらず、フロー・スタッフ・価格帯・導線を見て初めて処方できる。

失注は「なんとなく決まらなかった」で処理され、記録に残らないまま繰り返されます。まずは価格離脱型・信頼不足型・決断先送り型・新人格差型のどれが主因かを掴むこと。10問のチェックで傾向は自己判定できます。

ただし、タイプの特定はスタート地点にすぎません。同じタイプでも、効く一手は現場の条件次第で大きく変わります。自己判定を「当たり」にして、次に実際の現場を見て処方を決める——その順番が、失注を実際に減らす近道です。

FAQ
このセルフチェックだけで、自院のタイプを断定できますか?
できません。設問数も限られており、傾向を掴むための目安です。実際の主因は、カウンセリングの流れや価格帯、スタッフ構成を見ないと確定できません。
複数タイプに均等にチェックがつきました。どう考えればいいですか?
9問目・10問目(失注の記録・型の不在)にチェックがついているなら、まず「失注が見えていない」土台を整えることが先です。個別タイプの処方は、その後で見えてきます。
価格離脱型だったので、値下げを検討すべきでしょうか?
短絡的な値下げは、利益を削っただけで失注が減らないことがよくあります。価格そのものの問題か、価格に見合う理由の伝え方の問題かを切り分けることが先です。
新人格差型の場合、何から手をつければいいですか?
成約が属人化している状態です。できる人の進め方を型として言語化し、記録・練習できる形にするのが起点になります。ただし型の作り方は現場のやり方に依存します。

執筆:山本翔太(バイタリティデザイン合同会社 代表)建物の通信・ネットワーク・防犯設備をつくる、職人が動く現場を持つ事業会社に在籍しています。手順が飛ばされる理由や、あとから検証できなくなる工程がどこかを、管理する側ではなく動く側から見てきました。自由診療・美容医療については、自ら複数の施術を受けた当事者でもあります。カウンセリングで何を聞かれ、どこで迷い、何に警戒するかを、患者の側から知っています。男性ウェルネスブランド〈His Recoveries〉を運営。

タイプは、これで見当がつきます。ただ、御院がどのタイプで、何が効くかは、実際のカウンセリングとフローを見ないと決められません。

御院は、どのタイプで失注しているか。

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