Insights / 論考

自由診療の価格・メニュー設計
― 「安くする」以外の選ばれ方

「近隣より高いから選ばれない」——そう感じたとき、最初に手が伸びるのが値下げです。しかし自由診療の値下げは、利益を直撃する消耗戦になりがちです。本稿では、値下げ以外の選ばれ方を、メニュー設計と価格の伝え方から整理します。

山本翔太 Vitality Design LLC 代表 生活者理解の現場〈His Recoveries〉を自ら運営 読了 約5分
結論

自由診療の値下げは利益を直撃する消耗戦。対案は①価値の言語化(何が含まれるかの分解)②松竹梅の3段階メニュー(真ん中が選ばれやすい)③総額の明示と追加費用の事前説明(医療広告ガイドラインの費用表示にも適合)。価格は数字ではなく「何と比べられるか」の設計。

この記事の要点
  • 値下げは売上より先に利益を削る。1割の値下げを客数で取り返すのは想像以上に難しい。
  • メニューは松竹梅の3段階に。単品の羅列ではなく、「どれを選べばいいか」が分かる構造にする。
  • 価格は総額で明示し、追加費用を先に説明する。安心感はそれ自体が選ばれる理由になり、ガイドラインにも適合する。
  • 比べられるのは価格ではなく「何が含まれているか」。価値の分解が、価格の説得力になる。

価格の悩みはほとんどの場合、価格そのものではなく「価値が伝わっていない」ことの症状です。伝わっていない状態で数字だけ下げても、比較の土俵は変わりません。順番としては、メニューの構造と伝え方を先に整えるほうが、利益を守れます。

01値下げが利益を壊す構造

売価から変動費を引いた残りが粗利だとすると、値下げ分はすべて粗利から削られます。これは推測ではなく計算で出ます。必要な客数の倍率は「値下げ前の粗利額 ÷ 値下げ後の粗利額」です。粗利率50%の施術を1割値下げすると、粗利は売価の50%から40%に減り、0.5÷0.4=1.25。客数を25%増やして、ようやく元の粗利に戻ります。粗利率40%なら0.4÷0.3=1.33で、33%増が必要です。しかも値下げで来た顧客は、次の値下げで離れやすい。価格で選ばれた関係は、価格で終わります。

さらに深刻なのは現場への影響です。単価が下がるほど回転を上げる必要が生まれ、一人あたりの接客時間が削られ、体験の質が下がり、口コミや紹介という資産も育ちにくくなります。

02松竹梅でつくる「選ばれるメニュー」

単品メニューをずらりと並べた料金表は、選ぶ側にとって「どれを選べばいいか分からない」表です。迷いは離脱につながります。

この構造はカウンセリングでの提案とも連動します。属人化した提案を型にする際も、メニュー自体が3段階になっていると、押し売りせずに選んでもらう提案がしやすくなります。

原則はここまでです。御院のどのメニューにどれだけ余地があるかは、数字を見ないと言えません。 お話を聞かせてください

03価格の「伝え方」で信頼をつくる

なお、自由診療の費用表示は医療広告ガイドライン上も、通常必要とされる治療内容・費用・期間や回数などを分かりやすく示すことが求められる領域です。誠実な価格表示は、規制対応であると同時に、それ自体が「選ばれる理由」になります。

まとめ ― 価格は、価値の伝え方の問題

結論値下げは粗利を直撃する消耗戦。対案は、松竹梅の3段階で「選びやすい」メニューをつくり、総額と追加費用を先に明示し、含まれる価値を分解して見せること。比較の土俵を価格から中身に移せば、安さ以外で選ばれる。

価格設計は一度決めて終わりではなく、成約率・客単価・リピート率の数字を見ながら調整していくものです。数値経営の土台があれば、値付けは勘ではなく検証になります。

FAQ
近隣の相場より高いのですが、下げるべきですか?
まず「高いから選ばれていない」のか「価値が伝わっていないから選ばれていない」のかを切り分けてください。カウンセリングまで来た人の成約率が低いなら、価格より伝え方と提案の問題である可能性が高いです。
松竹梅の価格差は、どのくらいが適切ですか?
一律の正解はありませんが、内容の差が説明できる範囲に収めるのが原則です。価格差の理由を言葉にできないなら、それは値付けではなく構成の問題です。まず各プランの「誰向けか」を定義してください。
初回割引はやめたほうがいいですか?
一概には言えません。初回の心理的ハードルを下げる効果はあります。ただし総額が分かる表示とセットにすること、初回価格目当ての一回きり客に偏っていないかをリピート率で確認することが条件です。
値上げをしたいのですが、既存のお客様が離れませんか?
値上げは、内容の拡充や見直しとセットで、事前に理由を丁寧に伝えれば受け入れられやすい、と私たちは考えています。全メニュー一斉ではなく、新メニューや上位プランから段階的に行うと影響を確かめながら進められます。

執筆:山本翔太(バイタリティデザイン合同会社 代表)建物の通信・ネットワーク・防犯設備をつくる、職人が動く現場を持つ事業会社に在籍しています。手順が飛ばされる理由や、あとから検証できなくなる工程がどこかを、管理する側ではなく動く側から見てきました。自由診療・美容医療については、自ら複数の施術を受けた当事者でもあります。カウンセリングで何を聞かれ、どこで迷い、何に警戒するかを、患者の側から知っています。男性ウェルネスブランド〈His Recoveries〉を運営。

価格設計の考え方は、これで分かります。ただ、御院が「安さ」以外で選ばれているかは、現場を見ないと分かりません。

御院の価格は、安さで選ばれていないか。

御院の価格・メニューが「安さ」以外で選ばれる構造になっているか——継続診断で1枚に見立てます。

伺った内容をもとに、価格と利益のどこに余地があるかの見立てを1枚にしてお返しします。無償です。売り込みはしません。