令和7年8月15日付の厚労省医政局長通知(医政発0815第21号)は、無資格のカウンセラーが医師の診察を経ずに治療内容や適応を実質的に決める運用を、問題事例として明確に位置づけました。論点は「御院の治療決定が医師の診察を前提にしているか」の一点です。本記事は解説であり法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・所轄行政庁にご確認ください。
- 令和7年8月15日、厚労省医政局長が通知(医政発0815第21号)を発出し、美容医療の取扱いに線を引きました。
- 核心は、無資格のカウンセラーが医師の診察を経ずに治療内容・適応を実質的に決める運用が問題事例として明確化された点です。
- 問われているのは一点——御院の治療決定は「医師の診察」を前提にしているか、それともカウンセラー段階で実質的に決まっているか。
- 方向性は、カウンセラーの役割を傾聴・情報整理・不安の言語化に定義し直し、決定は医師の診察を経る流れに固定すること。
- 規制対応と経営は対立しません。「医師にきちんと診てもらって決めた」という納得は、むしろキャンセル減・リピートにつながります。
※ 本記事は令和7年8月15日付・厚生労働省医政局長通知(医政発0815第21号)「美容医療に関する取扱いについて」を経営者向けに平易に解説するものです。法的助言ではありません。個別の運用が適法かどうかは、弁護士・所轄行政庁にご確認ください。恐怖をあおる意図はありません。
多くのクリニックで、初回来院した患者に最初に対応するのは医師ではなく、カウンセラー(多くは無資格の接客・営業担当)です。施術メニューの説明、費用の提示、そして「どの治療を受けるか」の実質的な決定まで、カウンセラーの会話の中で進んでいく——これは珍しい運用ではありません。むしろ成約率を上げるための「標準」として広まってきました。その運用に、国が明確に線を引きました。
01何が起きたのか ― 通知の位置づけ
令和7年8月15日、厚生労働省医政局長は各都道府県知事等に宛てて、「美容医療に関する取扱いについて」(医政発0815第21号)を通知しました。背景には、美容医療をめぐるトラブル——高額契約、不十分な説明、健康被害——の増加があります。国民生活センターや消費者委員会が繰り返し問題提起してきた領域です。
この通知が実務上もっとも重いのは、医師の診察を経ずに、無資格のカウンセラーが治療内容や適応を実質的に決めてしまう運用を、問題事例として明確に位置づけた点です。医師法上、診断や治療方針の決定は医師の役割であり、これをカウンセラーが代替することは想定されていません。当たり前に聞こえますが、現場ではこの「当たり前」が崩れているケースが少なくない、という認識が国側で共有されたということです。
御院では、治療内容の決定は「医師の診察」を前提にした運用になっているか。それとも、カウンセラーの段階で実質的に決まっているか。
02なぜ「成約率のため」の運用が危ういのか
カウンセラーが費用と治療を先に固めてしまう運用は、短期の成約率という一点では機能します。医師の診察時間を短縮でき、営業トークに最適化された人材が対応するからです。しかしこの構造は、二つのリスクを内包します。
ひとつは、説明と決定の主体がずれること。患者が「誰の説明で、何に同意したのか」が曖昧になり、後日のトラブル——「聞いていない」「高額だと思わなかった」——の温床になります。今回の通知は、まさにこの曖昧さに向けられています。
もうひとつは、医師の診察が「事後承認」になること。カウンセラーが決めた内容を医師が形式的になぞるだけの運用は、診察の実質を欠いていると見なされうる。ここが、これまで曖昧だったラインです。
03御院のフローを、どう組み替えるか
法的な適否は個別判断が必要ですが、運用設計の観点で言えば、方向性はシンプルです。「カウンセラーが決める」から「医師が決めるための情報を、カウンセラーが整える」へ、役割を組み替えることです。
- カウンセラーの役割を「傾聴・情報整理・不安の言語化」に定義し直す
- 治療内容・適応・費用の最終決定は医師の診察を経るフローに固定する
- 「誰が・何を・どの順で説明したか」を記録に残す(説明の主体を明確化)
- 成約のKPIを、カウンセラー個人の契約額ではなく「診察後の納得度」に接続する
重要なのは、これは成約率を捨てる話ではないということです。押し込む力を弱める代わりに、医師の診察という「信頼の裏づけ」を導線に組み込む。どこを誰が担うかの再設計であって、売上を諦める話ではありません。
04規制対応と経営は、対立しない
「規制に合わせると成約が落ちるのでは」という不安はよく分かります。しかし実際は逆に働く、と私たちは見ています。患者が「医師にきちんと診てもらった上で決めた」という納得を持てると、次のような効果が期待できます。
- 契約後のキャンセル・クーリングオフ的な翻意が減りやすい
- 「押し売りされた」という不信が生まれにくく、口コミ・紹介に響きにくい
- スタッフが「決めさせる」プレッシャーから解放され、定着にも寄与しうる
規制対応と経営は、同じ方向を向いています。今回の通知は、短期の成約に最適化しすぎた運用を、持続可能な形に戻すきっかけと捉えるのが健全です。
※ 繰り返しますが、本記事は解説であり法的助言ではありません。個別の運用が適法かどうかは、弁護士・所轄行政庁にご確認ください。通知の原文は厚生労働省のウェブサイトで確認できます(「医政発0815第21号 美容医療に関する取扱いについて」で検索)。
—まとめ
令和7年8月の通知は、美容医療の「カウンセラーが実質的に治療を決める」運用に、明確な問いを突きつけました。恐れる話ではありません。問われているのは、御院のフローが「医師の診察」を軸に設計されているか、という一点です。
カウンセラーの役割を傾聴・情報整理に定義し直し、決定は医師の診察を経る。それは成約を捨てる話ではなく、信頼を導線に組み込む再設計です。個別の適法性は、専門家にご確認ください。
カウンセラーが費用を説明すること自体が禁止されたのですか?
医師の診察を挟むと、成約率が落ちませんか?
通知の原文はどこで読めますか?
うちの院のフローが問題ないか、見てもらえますか?
執筆:山本翔太(バイタリティデザイン合同会社 代表)建物の通信・ネットワーク・防犯設備をつくる、職人が動く現場を持つ事業会社に在籍しています。手順が飛ばされる理由や、あとから検証できなくなる工程がどこかを、管理する側ではなく動く側から見てきました。自由診療・美容医療については、自ら複数の施術を受けた当事者でもあります。カウンセリングで何を聞かれ、どこで迷い、何に警戒するかを、患者の側から知っています。男性ウェルネスブランド〈His Recoveries〉を運営。
規制の論点は、これで分かります。ただ、御院のフローが実際にどう回っているかは、現場を見ないと点検できません。
御院のフローは、医師の診察を軸にしているか。
御院のカウンセリングフローを、規制の観点も含めて継続診断で見立て、論点を1枚に整理してお渡しします(適法性の判断は専門家の領域です)。
伺った内容をもとに、運用と記録のどこが説明しにくい状態かの見立てを1枚にしてお返しします。無償です。売り込みはしません。